「自宅に住み続けながら、ゆとりある老後資金を――。」
そんな魅力的なキャッチフレーズで注目を集めるリバースモーゲージ。しかし、その手軽さの裏には、金利変動による想定外の負担増、不動産価格下落による融資打ち切り、予想以上の長寿が招く資金枯渇、そして最も避けたい家族間の相続トラブルなど、数多くの見過ごせないリスクが潜んでいます。
安易な契約が、大切な我が家を失い、穏やかな老後設計を根底から覆し、時には家族の絆さえも壊してしまう「こんなはずじゃなかった」という悲劇を招くことも少なくありません。
本記事では、日本におけるリバースモーゲージの契約実態を徹底調査し、実際に報告されている衝撃的な失敗事例を具体的に紹介。そして、それらの悲劇を未然に防ぎ、賢明な判断を下すために、契約前に必ず知っておくべき金利・担保評価のカラクリ、潜むリスクの詳細、そして専門家が教える具体的な回避策まで、あなたの未来を守るための情報を余すところなく解説します。
「自分は大丈夫」と思わず、この記事を“我が事”としてお読みください。後悔しない選択のために、今こそ知るべき真実がここにあります。
リバースモーゲージの罠!「老後の安心」が一転、自宅喪失・家族崩壊も…契約前に知るべき全リスクと失敗回避策
はじめに
このレポートは、リバースモーゲージの利用を検討されている高齢者の皆様とそのご家族に向けて作成しました。「自宅に住み続けながらお金を借りられる」という魅力的な仕組みのように宣伝されるリバースモーゲージですが、実際には契約条件の複雑さや隠れたリスクが存在します。
このレポートでは、実際に起きた失敗事例や注意すべきポイントを、できるだけわかりやすくお伝えします。大切な老後の資金計画と住まいの問題ですので、十分に理解した上で判断していただくことが何よりも重要です。
どうぞ最後までお読みいただき、リバースモーゲージを検討する際の参考にしていただければ幸いです。
1. リバースモーゲージとは?基本の「き」
リバースモーゲージの仕組み
リバースモーゲージとは、簡単に言うと「自宅を担保にしてお金を借りることができ、契約者が亡くなった後に自宅を売却して借金を返済する」という仕組みです。「リバース」は「逆の」、「モーゲージ」は「住宅ローン」という意味で、通常の住宅ローンとは「逆」の仕組みになっています。
通常の住宅ローンでは、借りたお金を少しずつ返していきますが、リバースモーゲージでは、借りたお金は増えていく一方で、返済は契約者が亡くなった後にまとめて行われます。主に高齢者の方が、年金だけでは足りない生活資金を確保するために利用します。
具体的な例で見てみましょう
【例】山田さん(75歳・一人暮らし)のケース
- 持ち家:土地付き一戸建て(評価額3,000万円)
- 年金収入:月に15万円
- 困りごと:「家はあるけど現金が少なく、生活が苦しい」
山田さんは銀行のリバースモーゲージを利用して、自宅を担保に1,500万円(評価額の50%)を借りることにしました。この1,500万円を、次の2つの方法で受け取れます。
- 一括受取型:1,500万円を一度に受け取り、必要に応じて使う
- 分割受取型:毎月一定額(例:5万円)を受け取る
山田さんは分割受取型を選び、毎月5万円を受け取ることで、年金と合わせて月20万円の収入を得られるようになりました。山田さんが亡くなった後、自宅は売却され、その売却金から借りた金額と利息が返済されます。
通常の住宅ローンとの違い
リバースモーゲージと通常の住宅ローンには、いくつかの大きな違いがあります。
項目 | 通常の住宅ローン | リバースモーゲージ |
目的 | 家を買うためのお金を借りる | すでに持っている家を担保にお金を借りる |
返済方法 | 毎月少しずつ返済する | 契約者が亡くなった後に一括返済(主に自宅の売却で) |
借入残高 | 徐々に減っていく | 徐々に増えていく |
金利 | 比較的低い(年0.4〜1.5%程度) | 比較的高い(年2.5〜4%程度) |
年齢制限 | 基本的には若いほど有利 | 高齢者向け(大体50〜80歳が対象) |
2. 契約条件で注意すべき重要ポイント
2-1. 金利条件は思ったより高い?
リバースモーゲージの金利は、通常の住宅ローンと比べてかなり高く設定されています。これは、銀行や金融機関がリバースモーゲージに特有のリスク(長生きリスク、不動産価格の下落リスクなど)を考慮しているためです。
【具体例】 佐藤さん(72歳)は、「今の住宅ローンの金利は1%以下」と聞いていたので、リバースモーゲージも同じくらいだろうと思っていました。しかし、実際に銀行で説明を受けると、金利は3.5%と言われ、「こんなに高いの?」と驚きました。
具体的な金利水準(2024年5月現在)
- リバースモーゲージの金利:年2.5〜4%程度
- 通常の住宅ローン(変動金利):年0.4〜1.5%程度
これだけ見ると「1〜2%の違い」と思うかもしれませんが、長期間にわたって積み重なると、その差は非常に大きくなります。
【金利の差による影響の例】 1,000万円を借りた場合、10年後の利息の違い:
- 金利1%の場合:約105万円
- 金利3.5%の場合:約411万円 → 差額は約306万円にもなります!
さらに注意すべきポイント
- ほとんどのリバースモーゲージは変動金利型です。これは、将来金利が上昇した場合、返済額も増えることを意味します。
- 金利は通常、年2回(例:4月と10月)見直されます。
- 「金利の上限(キャップ)」が設定されているかどうかも確認しましょう。これがないと、金利が際限なく上がる可能性があります。
2-2. 担保不動産の評価額と融資限度額
リバースモーゲージで借りられる金額は、ご自宅の評価額そのものではなく、その一部になります。これは、将来の不動産価格の下落に備えて、銀行や金融機関が安全策をとっているためです。
【具体例】 鈴木さん(68歳)は、不動産会社に自宅を査定してもらったところ「4,000万円」と言われました。「リバースモーゲージでも同じくらい借りられるだろう」と思っていましたが、実際に銀行から提示された融資限度額は2,000万円(評価額の50%)でした。鈴木さんは「予想の半分しか借りられない」と落胆しました。
融資限度額の一般的な水準
- 不動産評価額の50〜70%程度
- 土地の評価額を重視する傾向がある(建物は時間とともに価値が下がるため)
- マンションは対象外となる金融機関が多い(土地付き一戸建てが中心)
注意すべきポイント
- 金融機関による評価額は、一般的な不動産会社の査定額より低めになることが多いです。
- 定期的(通常3〜5年ごと)に不動産の再評価があります。評価額が下がると融資限度額も減る可能性があります。
- 評価費用(不動産鑑定費用)は、通常、借りる側の負担になります。
2-3. わかりにくい言葉:「リコース型」と「ノンリコース型」
リバースモーゲージには「リコース型」と「ノンリコース型」の2種類があります。この違いは非常に重要ですが、専門的な言葉なので理解しにくいかもしれません。わかりやすく説明します。
リコース型とは? 「リコース」とは「さかのぼる権利」という意味です。つまり、契約者が亡くなった後、自宅を売却しても借入金を完済できない場合、残りの借金は相続人(お子さんなど)が返済しなければならないという仕組みです。
ノンリコース型とは? 「ノン」は「ない」という意味で、ノンリコース型では、自宅の売却金で返済できなかった分の借金は帳消しになります。相続人が残りの借金を負担する必要はありません。
【具体例】 田中さん(75歳)は3,000万円を借りましたが、15年後に亡くなった時、利息も含めた借入残高は4,200万円になっていました。しかし、地価の下落で自宅は3,800万円でしか売れませんでした。
- リコース型の場合:差額の400万円を相続人が支払う必要があります。
- ノンリコース型の場合:差額の400万円は帳消しになります。相続人の負担はありません。
当然、ノンリコース型の方が借りる側には有利ですが、その分、金利が高かったり、融資限度額が低かったりする傾向があります。
注意すべきポイント
- 契約書に「ノンリコース」という言葉が明記されているか確認しましょう。
- 「ノンリコース」と説明されていても、実際の契約書に明記されていなければ、リコース型と同じ扱いになる可能性があります。
- 家族にも「リコース型かノンリコース型か」を伝えておくことが重要です。
3. リバースモーゲージの主なリスク
3-1. 金利変動リスク
リバースモーゲージの大部分は変動金利型です。これは、借りる時の金利が将来も同じとは限らず、市場の金利動向によって上下する可能性があることを意味します。特に、今は低金利ですが、将来金利が上昇した場合、想定以上の負担になる可能性があります。
【具体例】 山田さん(75歳)は契約時2.5%だった金利が5年後に4%に上昇しました。山田さんは毎月利息だけを支払うタイプの契約をしていたため、月々の支払いが急増し、年金だけでは利息の支払いが苦しくなりました。
金利上昇の影響 例:3,000万円を借りた場合
- 金利2.5%:年間利息75万円(月6.25万円)
- 金利4%:年間利息120万円(月10万円) → 月々の負担が3.75万円も増加!
注意すべきポイント
- 変動金利の場合、金利上昇により毎月の利息支払い額が増える可能性があります。
- 利息の支払いが元本に組み込まれるタイプ(元利一括返済型)では、金利上昇により借入残高の増加ペースが早まります。
- 固定金利型の商品も一部ありますが、通常は変動金利よりも高い金利設定になっています。
3-2. 不動産価格下落リスク
リバースモーゲージのもう一つの大きなリスクは、担保となる不動産の価格が将来下落する可能性です。特に日本では人口減少や高齢化により、地方を中心に不動産価格が下落する傾向にあります。
【具体例】 高橋さん(70歳)の自宅は田舎町にありました。契約時は2,500万円と評価されましたが、3年後の再評価では地域の過疎化が進み、評価額が1,800万円と30%も下落。融資限度額も下げられ、追加の借入ができなくなっただけでなく、一部返済を求められました。結局、住み続けることができず、自宅を売却して賃貸住宅に引っ越さざるを得なくなりました。
不動産価格下落の影響
- 融資限度額の引き下げ:不動産価値が下がると、融資限度額も下がります。
- 追加担保や一部返済の要求:借入残高が新たな融資限度額を上回った場合、差額の返済を求められることもあります。
- 契約解除のリスク:極端な場合、契約が解除されることもあります。
- 死亡後の売却価格不足:不動産価格が下がると、売却時に借入金を返済できない可能性が高まります。
注意すべきポイント
- 立地条件の良い場所の不動産(都市部や交通の便が良いところ)は、比較的価格が安定しています。
- ノンリコース型の契約なら、不動産価格が下がっても、相続人が不足分を負担する心配はありません。
- 定期的な不動産の再評価があることを忘れないでください。
3-3. 長生きリスク
「長生きリスク」というと変な言い方ですが、リバースモーゲージにおいては、予想よりも長生きすることで資金が足りなくなるリスクを指します。健康で長生きすることは素晴らしいことですが、リバースモーゲージの計画においては考慮すべき重要な要素です。
【具体例】 渡辺さん(80歳)は、「あと10年くらい生きるだろう」と考え、毎月10万円を受け取るリバースモーゲージを契約しました。しかし、健康に恵まれて95歳まで生きたため、90歳の時点で融資限度額に達してしまいました。その後5年間は、年金だけで生活することになり、医療費や介護費の負担で苦しい思いをしました。
長生きリスクの影響
- 融資限度額に達する:予定より長生きすると、融資限度額に達してそれ以上借りられなくなる可能性があります。
- 生活費の不足:特に分割受取型では、受取りが途中で止まると生活が立ち行かなくなることも。
- 子供や親族への負担:結局、子供や親族に援助を求めることになり、「迷惑をかけない」という当初の目的が果たせなくなります。
注意すべきポイント
- 平均余命より長く生きる可能性を考慮した計画を立てましょう。
- 融資限度額に達した場合の対応策を事前に考えておきましょう。
- 他の収入源(年金、預貯金など)との組み合わせを検討しましょう。
3-4. 相続に関するリスク
リバースモーゲージは、契約者だけでなく、その家族(特に相続人)にも大きな影響を与えます。事前に家族と十分に話し合わないと、後々トラブルになる可能性があります。
【具体例】 小林さん(78歳)は子供たちに詳しい説明をしないままリバースモーゲージを契約しました。小林さんの死後、子供たちは「実家が売却されることになる」と初めて知り、「思い出のある家を残したかった」と感情的になりました。また、借入金の使途についても疑問が生じ、兄弟間で不信感が生まれ、深刻な家族間の対立に発展しました。
相続に関するリスクの具体例
- 相続人の同意が得られない:多くの金融機関では、契約時に推定相続人全員の同意を求めます。一人でも反対すると契約できないことも。
- 感情的な対立:親の死後に実家が売却されることに対する感情的な反発が生じることがあります。
- 遺産分割での不公平感:「家」という大きな資産が売却されるため、遺産分割で不公平感が生じる可能性があります。
- リコース型の場合の債務相続:リコース型で不動産売却額が借入残高に満たない場合、相続人が不足分を負担することになります。
注意すべきポイント
- 契約前に、必ず相続人となる方々(お子さんや親族)に説明し、理解と同意を得ておきましょう。
- 契約内容(特にノンリコース型かリコース型か、死亡後の手続きなど)を正確に伝えましょう。
- 遺言書を作成するなど、相続に関する取り決めを明確にしておきましょう。
3-5. その他のリスクと制限
リバースモーゲージには、上記以外にも様々なリスクや制限があります。
契約解除・一括返済リスク
- 契約違反:虚偽の申告、担保不動産の無断改築・賃貸、住所変更の未届けなどにより、契約が解除され、借入金の一括返済を求められることがあります。
- 担保不動産の滅失・損害:火災や自然災害などで担保不動産が大きな損害を受けた場合、契約が継続できなくなることがあります。
【具体例】 鈴木さん(65歳)は、リバースモーゲージ契約後、子供を同居させることにしました。しかし、契約では「本人以外の同居は不可」という条件があったため、金融機関から契約解除の通知が来て、借入金を一括返済するよう求められました。
中途解約の制限・違約金 リバースモーゲージは基本的に長期契約であり、中途解約には制限や違約金があることが一般的です。
【具体例】 田中さん(70歳)は、リバースモーゲージ契約の3年後に、子供と同居することになり、契約を解約しようとしました。しかし、中途解約には借入金の一括返済に加え、100万円の違約金が必要と告げられ、解約を断念しました。
対象不動産の制限
- マンションは対象外、あるいは評価が厳しくなる金融機関が多いです。
- 借地権付きの建物や、共有名義の不動産などは取り扱いが難しい場合があります。
利用目的の制限
- 融資された資金の使途は、基本的に生活資金や医療費、介護費用などに限定されます。
- 事業資金や投機目的(株式投資など)での利用は認められないことが多いです。
4. リバースモーゲージの失敗事例から学ぶ教訓
実際に起きた失敗事例から、私たちは多くのことを学ぶことができます。以下に、典型的な失敗事例とその教訓をご紹介します。
4-1. 不動産価格の下落による融資打ち切りと自宅売却
事例: Aさん(72歳)は、地方都市の一戸建てを担保にリバースモーゲージを利用し、毎月15万円を受け取っていました。契約から5年後、地域の過疎化と不動産不況が重なり、担保不動産の評価額が当初の3,000万円から1,800万円に大幅に下落しました。金融機関から融資限度額の引き下げと、すでに借りている金額の一部返済を求められました。
Aさんは追加資金がなく、結局融資は途中で打ち切られました。さらに、一部返済もできなかったため、契約解除となり、自宅を売却せざるを得なくなりました。「自宅に住み続けられる」というリバースモーゲージの大きなメリットが失われ、賃貸住宅に引っ越すことになりました。
教訓:
- 不動産価格が比較的安定している地域(都市部や交通の便が良い場所)の物件を選ぶことが重要です。
- 契約時に「不動産価格が下落した場合の対応」について詳細に確認しておきましょう。
- 「ノンリコース型」の契約であれば、不動産価格下落時のリスクが軽減されます。
- 急激な不動産価格の下落に備え、ある程度の手元資金は残しておくことが大切です。
4-2. 金利上昇による利息負担増と相続人の負担
事例: Bさん(75歳)は、変動金利型のリバースモーゲージで2,500万円を借りました。契約時の金利は2.5%でしたが、8年後には市場金利が急上昇し、適用金利が4.5%になりました。Bさんは利息の支払いが困難になり、未払い利息は元本に加算される形になりました。
Bさんが88歳で亡くなった時、借入残高は元本と利息を合わせて3,800万円に膨らんでいました。不動産を売却しましたが、3,200万円しか売れず、リコース型だったため、相続人である子供たちが残りの600万円を負担することになりました。子供たちはリバースモーゲージの詳しい内容を理解していなかったため、大変困惑しました。
教訓:
- 金利上昇の可能性を考慮した計画を立てることが重要です。
- 「ノンリコース型」の選択を検討しましょう。
- 契約内容を相続人に正確に伝え、理解してもらうことが大切です。
- 変動金利型の場合、将来の金利上昇に備えて、ある程度の余裕を持った計画を立てましょう。
4-3. 長生きによる融資限度額到達と生活の困窮
事例: Cさん(80歳)は、平均余命を参考にリバースモーゲージの利用計画を立て、毎月12万円を受け取る契約を結びました。担保評価額は2,800万円、融資限度額は1,400万円(評価額の50%)でした。
Cさんは予想以上に長生きし、健康状態も比較的良好でした。90歳の時点で融資限度額に達し、それ以上の借入はできなくなりました。年金だけでは生活費や医療費をまかなえず、子供たちに経済的な援助を頼らざるを得なくなりました。「子供に迷惑をかけないため」という当初の目的が果たせず、Cさんも子供たちも心理的な負担を感じることになりました。
教訓:
- 平均余命だけでなく、それよりも長く生きる可能性を考慮した計画を立てましょう。
- 融資限度額の設定を確認し、長期的な資金計画を立てることが重要です。
- 他の資金源(年金、預貯金など)とのバランスを考えましょう。
- 分割受取型で毎月一定額を受け取る場合は、受取額を少なめに設定し、期間を長く確保することも検討しましょう。
4-4. 相続人とのコミュニケーション不足によるトラブル
事例: Dさん(78歳)は、子供たちに詳しい説明や相談をしないまま、リバースモーゲージを契約しました。Dさんの死後、相続人である子供たちは、実家が売却されることや、リバースモーゲージの契約内容について初めて詳しく知りました。
子供たちの一部は、思い出のある実家がなくなることに強く反対し、中には「自分たちで返済するから家を残したい」と主張する子もいました。また、リバースモーゲージで得た資金の使途についても疑問が生じ、「親はお金をどう使ったのか」という不信感から、相続人間で深刻な対立が生じました。
教訓:
- リバースモーゲージの利用を検討する早い段階で、相続人全員に説明し、理解と同意を得ることが極めて重要です。
- 契約内容(特にノンリコース型かリコース型か、死亡後の手続きなど)を正確に伝えましょう。
- 資金の使途を明確にし、可能であれば記録を残しておくことも大切です。
- 遺言書の作成など、相続に関する取り決めを明確にしておきましょう。
4-5. 安易な契約と説明理解不足による後悔
事例: Eさん(70歳)は、銀行の担当者から「自宅に住み続けながら老後資金を得られる便利な制度」という説明を受け、メリットばかりに目を向けてリバースモーゲージを契約しました。特に、定期的な担保評価の見直しや、金利変動リスク、契約解除条件などについての理解が不十分でした。
数年後、不動産価格が下落し、金利も上昇したことで融資条件が悪化。契約書を読み返しても専門用語が多く理解が難しく、どこに相談して良いかもわからないまま不安な日々を過ごすことになりました。「もっと時間をかけて慎重に検討し、専門家にも相談すればよかった」と強く後悔したそうです。
教訓:
- 契約内容を十分に理解するまで、何度でも質問し、説明を求めることが重要です。
- 銀行や金融機関の説明だけでなく、中立的な専門家(ファイナンシャルプランナーや弁護士など)にも相談しましょう。
- 契約書の重要な条件(金利、担保評価の見直し、契約解除条件など)を、わかりやすい言葉で説明してもらいましょう。
- 急いで契約せず、十分な検討期間を設けることが大切です。
5. リバースモーゲージを検討する際のアドバイス
リバースモーゲージの利用を検討されている方に、以下のアドバイスをお伝えします。
5-1. 複数の金融機関・商品を比較する
リバースモーゲージは金融機関によって条件が大きく異なります。一つの金融機関だけで決めず、複数の選択肢を比較検討しましょう。
比較すべきポイント
- 金利条件(固定か変動か、金利の水準、キャップの有無など)
- 融資限度額(評価額に対する割合)
- 手数料や諸費用(契約時、管理費、再評価時など)
- リコース型かノンリコース型か
- 契約解除条件や中途解約の条件
公的なリバースモーゲージも検討 「不動産担保型生活資金」という公的な制度もあります。この制度は、市区町村の社会福祉協議会が実施しており、民間の金融機関より有利な条件(金利が低い、ノンリコース型など)が設定されていることがあります。ただし、所得制限などの条件があります。
5-2. 契約内容を十分に理解する
リバースモーゲージの契約書には、専門用語や複雑な条件が含まれています。わからない点は必ず質問し、納得するまで説明を求めましょう。
特に確認すべきポイント
- 金利条件(変動か固定か、見直しのタイミングなど)
- 不動産の評価方法と再評価の頻度
- リコース型かノンリコース型か
- 契約解除となる条件(どんな場合に一括返済を求められるか)
- 死亡時の手続き(相続人の対応など)
わかりやすい説明を求める権利 金融機関には「説明責任」があります。専門用語をわかりやすく説明してもらう権利が皆さんにはあります。遠慮せずに「これはどういう意味ですか?」と質問しましょう。
5-3. 専門家に相談する
リバースモーゲージは複雑な金融商品です。銀行や金融機関だけでなく、中立的な立場の専門家にも相談することをお勧めします。
相談できる専門家
- 独立系のファイナンシャルプランナー(特定の金融機関に所属していない方)
- 弁護士(契約内容の法的側面をチェック)
- 消費生活センター(無料相談が可能)
- 弁護士会や司法書士会の無料相談会
相談するメリット
- 第三者の視点からアドバイスを受けられる
- 見落としがちなリスクを指摘してもらえる
- 他の選択肢(代替案)も提案してもらえる
5-4. 相続人と十分に話し合う
リバースモーゲージは契約者だけでなく、相続人(お子さんや親族)にも大きな影響を与えます。事前の十分な話し合いが重要です。
話し合うべき内容
- リバースモーゲージの契約内容(特にリコース型かノンリコース型か)
- 契約者が亡くなった後の手続き
- 自宅の売却についての感情的な側面
- 借入金の使途や資金計画
話し合いの記録を残す 話し合いの内容は、可能であれば文書にして残しておくことをお勧めします。これにより、後々「聞いていない」「知らなかった」といったトラブルを防ぐことができます。
5-5. 代替案も検討する
リバースモーゲージが唯一の選択肢ではありません。他の方法も比較検討しましょう。
代替案の例
- リースバック:自宅を売却し、その後賃貸として住み続ける方法。リバースモーゲージより年齢制限が緩やかで、資金の使途制限もありません。
- 住み替え(ダウンサイジング):より小さな家や管理のしやすい住居に引っ越し、残ったお金で老後資金を確保する方法。
- 子供や親族との同居:可能であれば、子供などと同居し、住居費を節約する方法。
- 公的支援制度の活用:生活福祉資金貸付制度など、公的な支援制度を活用する方法。
- 自宅の一部賃貸:自宅の一部(空き部屋など)を賃貸に出す方法。
各選択肢のメリット・デメリット それぞれの選択肢には、メリットとデメリットがあります。例えば、リースバックは即座に多額の資金を得られますが、賃料の支払いが必要になります。住み替えは環境の変化に適応する必要がありますが、管理の手間が減るというメリットもあります。
自分の状況や価値観に合った選択をすることが大切です。
6. おわりに
リバースモーゲージは、自宅に住み続けながら老後の資金を得られる魅力的な制度ですが、様々なリスクや注意点もあることをご理解いただけたと思います。
契約を検討する際は、目先の資金調達というメリットだけに目を向けるのではなく、長期的な視点からリスクも十分に考慮し、ご自身の状況や家族の意向と照らし合わせて慎重に判断することが重要です。
特に重要なポイントをもう一度おさらいしましょう:
- 金利は通常の住宅ローンより高めです(年2.5〜4%程度)。
- 融資限度額は不動産評価額の50〜70%程度です。
- 「リコース型」か「ノンリコース型」かを必ず確認しましょう。
- 金利変動リスク、不動産価格下落リスク、長生きリスクなどを考慮した計画を立てましょう。
- 契約内容は十分に理解し、相続人とも話し合った上で契約しましょう。
- 複数の金融機関や商品、代替案も比較検討しましょう。
このレポートが、リバースモーゲージの利用を検討されている皆様にとって、賢明な判断をするための参考になれば幸いです。最終的には、ご自身の生活環境や価値観に基づいて、後悔のない選択をしていただきたいと思います。
参考情報:リバースモーゲージの相談先
リバースモーゲージについてさらに詳しく相談したい場合は、以下の窓口が利用できます。
公的な相談窓口
- 各市区町村の消費生活センター(電話番号:188)
- 日本司法支援センター(法テラス)(電話番号:0570-078374)
- 各市区町村の社会福祉協議会(不動産担保型生活資金について)
民間の相談窓口
- 日本FP協会(ファイナンシャルプランナーの紹介)
- 各地の弁護士会(法律相談)
- 各地の司法書士会(法律相談)
専門家のアドバイスを受けながら、ご自身にとって最適な選択をされることをお勧めします。