農地転用の許可申請でお悩みですか?本記事では農地法に基づく転用申請の全プロセスを、最新の法令と実務知識に基づいて徹底解説します。
申請書の正しい書き方から必要書類の準備、提出後の流れまで、図解とサンプル付きでわかりやすく説明。許可率を高める実践的なノウハウと、よくあるトラブルの回避方法も網羅。
これから農地転用を検討されている方も、申請書類の作成に困っている方も、この記事を読めば申請から許可までの道のりが明確になります。専門家の視点で整理した情報と、実際の申請事例から得られた知見をもとに、農地転用の成功へと導きます。
【完全ガイド】農地転用許可申請の全手順と成功のポイント|行政書士が解説する申請書作成から許可までの道のり
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1章 農地転用の基礎知識
1.1 農地転用とは何か(定義と目的)
農地転用とは、「農地を農地以外のものにすること」を意味します。具体的には、農地を宅地、駐車場、太陽光発電所、工場、病院、道路、山林などの農業以外の用途に変更する行為です157。これは単に土地の物理的な形状を変えるだけでなく、「耕作の目的に供されている土地を、耕作の目的に供される土地以外の土地にする全ての行為」を指します4。
農地転用許可制度の目的は、国土の計画的かつ合理的な土地利用の観点から、農業と農業以外の土地利用計画との調整を図りながら、優良農地を確保することにあります9。この制度により、農地の荒廃や乱開発を防止し、食料生産の基盤となる農地を保全することが目指されています。
1.2 農地法における位置づけと重要性
農地法において、農地は「国民のために限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源である」と位置づけられています4。農地法の第1条では、農地を効率的に利用する耕作者による権利の取得や利用を促進し、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、国民の食料の安定供給の確保を図ることが明記されています4。
農地法は主に以下の3つの条文で農地の利用を規制しています:
- 農地法第3条:農地の売買や賃借を規制
- 農地法第4条:所有者自らが農地を転用する場合を規制
- 農地法第5条:農地の転用を前提とした売買や賃借を規制2
これらの規制により、農地は単なる土地ではなく、国の食料自給率を保つための重要な資源として保護されています2。
1.3 転用許可が必要なケースと不要なケース
転用許可が必要なケース
原則として、農地を農地以外の用途に変更する場合は、農地法第4条または第5条に基づく許可申請が必要です4。
- 農地法第4条:所有者自らが農地を転用する場合(自己住宅の建築、駐車場、植林など)8
- 農地法第5条:転用目的で農地の権利を移転・設定する場合(農地を売却して買い手が住宅地などに転用する場合、農地を賃貸して賃借人が農業以外の用途で使用する場合など)68
また、農地の区域によって手続きが異なります:
転用許可が不要なケース
以下のような場合は、農地転用の許可が不要です:
- 市街化区域内の土地について、あらかじめ農業委員会に届出ている場合1
- 国、都道府県または指定市町村が転用する場合1
- 市町村(指定市町村を除く)が、道路、河川等の土地収用法対象事業のため転用する場合1
- 過去に農地転用の許可を受けている場合(農業委員会で「農地転用許可済証明等」の証明を受ける必要あり)3
- 非農地証明を取得した場合(10年以上にわたって宅地等であったことを証明できる場合)3
- 2アール未満の農業用施設建築等のための転用59
なお、許可なく無断で農地を転用した場合は、農地法違反となり、都道府県知事等から工事の中止や原状回復等の命令がなされる場合があります。さらに、これに従わない場合は、最高3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることがあります18。
農地転用の種類と区分
農地転用とは、農地を農地以外の用途に変更することですが、その種類や区分によって許可の難易度や申請方法が大きく異なります。ここでは、農地区分の詳細と転用の種類について解説します。
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2章 農地区分(甲種、第1種、第2種、第3種)の詳細解説
農地は、その位置や営農条件、市街地化の状況などから5つの区分に分けられ、それぞれ転用許可の基準が異なります。
2.1 農地区分の種類
(1) 農用地区域内農地(青地)
農業振興地域整備計画において「農用地区域」に指定された農地です。約10年間農業を推進するための特別に法律で制限された土地であり、原則として転用が認められません。一時転用の場合のみ例外的に認められることがあります。
(2) 甲種農地
**市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えている農地**で、以下のいずれかに該当します:
- 集団的(おおむね10ヘクタール以上)に存在する農地で、高性能な農業機械による営農に適している
- 農業公共投資(土地改良事業等)から8年以内である
甲種農地は原則不許可ですが、以下の場合は例外的に許可されます:
- 農業用施設、農産物加工・販売施設
- 土地収用事業の認定を受けた施設
- 集落接続の住宅等(500㎡以内)
- 地域の農業振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設
(3) 第1種農地
**良好な営農条件を備えている農地**で、以下のいずれかに該当します:
- 集団的(おおむね10ヘクタール以上)に存在する
- 農業公共投資(土地改良事業等)の対象である
- 生産力の高い農地
第1種農地も原則不許可ですが、甲種農地とほぼ同様の例外規定があり、やや許可が得やすい傾向にあります。
(4) 第2種農地
「市街化の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内にある農地」に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地で、以下のいずれかに該当します:
- 街路が普遍的に配置されている地域内にある
- 市街化の傾向が著しい区域に近接する区域内にある農地で、規模が10ヘクタール未満
- 駅、市町村役場等の公共施設から近距離(500メートル以内)にある
第2種農地は、当該農地でしか目的が達成できない場合(代替性がない場合)に許可されます。
(5) 第3種農地
**市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内にある農地**で、以下のいずれかに該当します:
- 上水道管、下水道管、ガス管のうち2つ以上が埋設された道路の沿道の区域で、おおむね500メートル以内に2つ以上の公共公益施設がある
- 駅、市町村役場等の公共施設から至近距離(300メートル以内)にある
- 都市計画法上の用途地域が定められている区域内にある
- 土地区画整理事業の施行区域内にある
- 街区の面積に占める宅地化率40パーセント以上の区画内にある
第3種農地は原則許可となります。
2.2 転用目的による分類と許可の難易度
農地転用の許可難易度は、農地区分だけでなく転用目的によっても異なります。
公共性の高い事業
道路、学校、病院などの公共性の高い事業は、甲種農地や第1種農地でも例外的に許可される可能性が高くなります。
農業関連施設
農業用倉庫、農産物加工施設など、農業に関連する施設への転用は、比較的許可を得やすい傾向にあります。
太陽光発電設備
近年増加している太陽光発電設備の設置については、甲種農地や第1種農地では原則不許可ですが、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の場合は、支柱部分について一時転用として許可される場合があります。
住宅・商業施設
個人住宅や商業施設への転用は、第3種農地では比較的容易ですが、甲種農地や第1種農地では非常に厳しい審査が行われます。集落に接続する場合など、限定的な条件下でのみ許可される可能性があります。
2.3 一時転用と永久転用の違いと申請方法
農地転用は、期間によって「永久転用」と「一時転用」の2種類に分けられます。
永久転用
永久転用は、農地を恒久的に農地以外の用途に変更することです。
具体例:
- 農地に住宅や店舗を建築する
- 農地を駐車場や資材置き場として整備する
- 農地に太陽光発電設備を設置する
申請方法:
- 市街化区域内の農地:農業委員会への届出で済む
- 市街化区域外の農地:農地法第4条(自己所有農地の転用)または第5条(権利移動を伴う転用)に基づく許可申請が必要
一時転用
一時転用は、期間を定めて農地を一時的に農地以外の用途に使用し、その後農地に復元することを前提とした転用です。
具体例:
- 建設工事に伴う現場事務所や資材置き場
- イベント開催期間中の臨時駐車場
- 砂利などの地下資源の採取
- 営農型太陽光発電設備の支柱部分
申請方法:
基本的な申請方法は永久転用と同じですが、以下の点が異なります:
- 転用期間: 原則として3年以内(営農型太陽光発電設備の場合は最長10年)
- 追加書類: 農地復元計画書、農地復元工事の見積書、農地復元の誓約書などが必要
- 許可基準の緩和: 一時転用の場合、農用地区域内農地(青地)や甲種農地、第1種農地でも例外的に許可される可能性がある
- 権利設定: 農地法第5条の場合、設定または移転する権利は所有権以外(賃借権等)であることが必要
一時転用の場合、転用期間終了後は確実に農地に復元することが求められ、これが許可の重要な条件となります。
農地転用は多くの法律知識が必要で、土地の区分により手続きが多岐にわたり、さらに市町村によってローカルルールも存在します。申請から許可まで通常3ヶ月程度かかり、農地区分によっては1年かかるケースもあります。専門家のサポートを受けることで、スムーズな申請手続きが可能になるでしょう。
3章 農地転用許可申請の流れ(ステップバイステップガイド)
農地転用の許可申請は複雑な手続きですが、適切な準備と理解があれば確実に進めることができます。ここでは、申請から許可までの流れを詳しく解説します。
3.1 事前調査と計画立案のポイント
1. 農地区分の確認
まず最初に行うべきは、転用したい農地の区分を確認することです。農地区分によって許可の難易度が大きく異なります。
- 市街化区域内の農地:届出のみで転用可能
- 市街化区域外の一般農地:許可申請が必要
- 農業振興地域内の農用地区域(青地):原則転用不可(農振除外が必要)
この確認は市町村の農業委員会で行えます。事前に農地の所在地、地番を準備して相談しましょう。
2. 転用計画の具体化
転用目的を明確にし、具体的な土地利用計画を立てます。
- 建物を建てる場合:建物の配置、規模、用途
- 駐車場にする場合:区画数、舗装方法
- 太陽光発電の場合:パネルの配置、出力規模
計画は図面に落とし込み、周辺農地への影響(日照、排水など)も考慮します。特に排水計画は重要で、雨水や生活排水の処理方法を明確にする必要があります。
3. 関係法令の確認
農地法以外にも、以下の法令に該当しないか確認が必要です。
- 都市計画法(開発許可)
- 建築基準法(接道義務など)
- 各自治体の条例(太陽光発電設備設置条例など)
これらの確認を怠ると、農地転用許可が下りても他の法令で工事ができないという事態になりかねません。
3.2 必要書類の収集と作成方法
農地転用許可申請には多くの書類が必要です。主な書類とその収集・作成方法を解説します。
1. 許可申請書
農業委員会で入手できる所定の様式を使用します。第4条申請(自己所有地の転用)か第5条申請(権利移動を伴う転用)かで様式が異なります。
2. 土地の登記事項証明書
法務局で取得します。発行から3ヶ月以内のものが必要です。所有者の住所が現住所と異なる場合は、住民票も併せて提出します。
3. 位置図
市販の地図を利用し、対象農地と最寄りの駅、役場、インターチェンジなどとの位置関係がわかるように作成します。縮尺を記載し、対象農地を色塗りします。
4. 公図の写し
法務局で取得できます。対象農地は色枠で囲み、周辺の土地の地番、地目、所有者名などを記入します。
5. 周辺土地利用図
住宅地図などを利用し、対象農地の位置を明示します。
6. 申請地の現況写真
デジタルカメラで撮影し、A4サイズの用紙に配置します。対象農地の全景を数枚と、東西南北各方向からの写真を撮影します。
7. 事業計画書
転用の目的、選定理由、事業内容、資金計画などを記載します。農業委員会に用意されているフォーマットを使用します。
8. 土地利用計画図
対象農地にどのような施設を設けるかを示す図面です。建築事務所やハウスメーカーから提供されることもありますが、自分で作成する場合はCADやパワーポイントなどを使用します。
9. 建物等施設の平面図・立面図
建物を建設する場合に必要です。建築事務所やハウスメーカーから提供されることが多いです。
10. 資金計画書と資力を証する書類
資金計画書は所定の様式に記入します。資力を証する書類としては、預金残高証明書や融資証明書などが必要です。
11. その他必要に応じた書類
- 水利権者等の同意書
- 土地改良区の意見書(対象農地が土地改良区内にある場合)
- 地積測量図(一部転用の場合)
- 委任状(行政書士等に依頼する場合)
3.3 申請書の記入例と注意点
申請書の記入には細心の注意が必要です。以下に主な記入項目と注意点を示します。
申請者情報
- 住所:住民票と完全に一致させる
- 氏名:戸籍と一致させ、押印は実印を使用
- 法人の場合:法人登記と一致させ、代表者印を使用
土地の表示
- 所在:登記簿と完全に一致させる
- 地番:登記簿と完全に一致させる
- 地目:登記簿上の地目を記載
- 面積:登記簿上の面積を記載
転用計画
- 転用目的:具体的に記載(「一般住宅建築」「駐車場」など)
- 転用面積:実測面積を記載(一部転用の場合は測量が必要)
- 工事計画:着工予定日と完了予定日を記載
事業計画書の記入ポイント
- 転用目的と土地選定理由を明確に記載
- 資金計画は具体的な数字で示す
- 周辺農地への影響と対策を具体的に記載
3.4 提出から許可までのタイムライン
農地転用許可申請から許可までの標準的なタイムラインは以下の通りです。
1. 事前相談(1〜2週間)
農業委員会に相談し、必要書類や申請の見通しについて確認します。
2. 書類準備(2〜4週間)
必要書類を収集・作成します。土地改良区の意見書など、取得に時間がかかる書類もあります。
3. 申請書提出(締切日に注意)
多くの市町村では月に1回、申請の締切日を設けています(多くは月初か月末)。締切に間に合わないと、1ヶ月審査が遅れることになります。
4. 農業委員会での審査(3〜4週間)
提出された申請書は農業委員会の総会で審議されます。総会は通常月1回開催されます。
5. 県への進達と審査(2週間)
農業委員会の意見を付して県に送られ、県で審査されます。
6. 許可証の交付
問題がなければ許可証が交付されます。農業委員会から連絡があり、受け取りに行きます。
7. 全体の所要期間
- 市街化区域内の農地(届出のみ):1〜2週間
- 市街化区域外の一般農地:申請から許可まで約6週間
- 農用地区域内の農地(農振除外が必要):半年〜1年以上
注意点として、以下の場合は審査期間が長くなります:
- 転用面積が30a(アール)を超える場合:都道府県農業委員会ネットワーク機構の意見聴取が必要
- 転用面積が4haを超える場合:農林水産大臣との協議が必要
- 関係法令の手続きが必要な場合:それぞれの手続きに時間がかかる
また、許可が下りるまでは対象農地での工事は一切できません。無断で工事を始めると、農地法違反となり罰則の対象になる可能性があります。
許可後は、工事進捗状況(許可の日から3ヶ月後及びその後1年ごと)及び工事完了の報告書の提出が必要です。
農地転用の申請は複雑ですが、事前の準備と計画を丁寧に行うことで、スムーズに進めることができます。不明点がある場合は、早めに農業委員会や専門家に相談することをお勧めします。
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4章 申請書類作成の実践ガイド
農地転用許可申請は書類の正確さが許可の可否を左右します。この章では、申請書の詳細な記入方法から添付書類の準備、図面作成のポイントまで実践的に解説します。
4.1 申請書の各項目の詳細解説
1. 基本情報の記入
(1) 日付欄
- 申請日は空欄のまま提出し、農業委員会窓口での確認後に記入するのが無難です
- 記入済みで書類に不備があった場合、再提出時に日付を修正する手間が生じます7
(2) 申請者情報
- 住所:住民票と完全に一致させる
- 氏名:戸籍と一致させ、押印は実印を使用
- 職業:具体的に記載(「会社員」「自営業(業種)」など)
- 年齢:申請日時点の年齢を記入(誕生日が近い場合は注意)7
(3) 申請地の情報
- 所在地・地番・地目・面積:登記事項証明書と完全に一致させる
- 現況:実際の利用状況(休耕地の場合は「休耕田」「休耕畑」など)7
2. 転用計画の記入
(4) 転用の目的
(5) 転用理由の詳細
- 農地をなぜ転用する必要があるのか、事業との関連性を具体的に説明
- 当該土地を選定した理由(他の候補地との比較、立地条件など)
- 第2種農地の場合:周辺の土地で目的を達成できない理由
- 第1種農地や甲種農地の場合:他の農地区分では目的が達成できない理由12
(6) 事業または施設の概要
- 建築物の場合:用途、構造、階数、建築面積
- 駐車場の場合:区画数、舗装方法
- 資材置場の場合:保管する資材の種類、数量
(7) 資金計画
- 資金調達方法(自己資金か融資か)を明記
- 費用内訳(土地取得費、造成費、建築費など)を万単位で記載
- 合計金額を記載2
(8) 被害防除施設の概要
- 排水計画(排水先及び排水経路、方法を明記)
- 土地改良区域内の場合はその旨記載
- 隣接農地への影響対策(土砂流出防止、日照問題など)2
4.2 添付書類の準備チェックリスト
以下は農地転用許可申請に必要な添付書類のチェックリストです。申請前に漏れがないか確認しましょう。
基本書類(共通)
- □ 許可申請書(第4条または第5条)
- □ 土地の登記事項証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- □ 住民票(登記上の住所と現住所が異なる場合)
- □ 位置図(対象農地と主要施設との位置関係がわかるもの)
- □ 公図の写し(対象農地を色枠で囲み、周辺の地番等を記入)
- □ 周辺土地利用図(住宅地図など)
- □ 申請地の現況写真(全景と東西南北各方向からの写真)
- □ 事業計画書
- □ 土地利用計画図
- □ 資金計画書
- □ 資力を証する書類(預金残高証明書または融資証明書)59
建物建築の場合の追加書類
- □ 建物の平面図・立面図
- □ 排水計画図(土地利用計画図に含める場合は不要)
特殊なケースでの追加書類
- □ 地積測量図(一部転用の場合)
- □ 土地改良区の意見書(土地改良区域内の場合)
- □ 水利権者等の同意書(必要な場合)
- □ 委任状(行政書士等に依頼する場合)
- □ 確認書(委任する場合の事業計画通りに転用を行う確認書)
- □ 法人の登記事項証明書(申請者が法人の場合)
- □ 他法令の許認可書類の写し(必要な場合)59
転用目的別の追加書類
- □ 資材置場・駐車場等事業計画書(資材置場・駐車場の場合)
- □ 既存施設利用状況の説明書(資材置場・駐車場の場合)
- □ 既存施設との位置関係図(資材置場・駐車場の場合)
- □ 数量算定根拠説明資料(資材置場・駐車場の場合)
- □ 確約書(転用目的以外に使用しない旨)5
4.3 図面作成のポイントと具体例
農地転用申請に必要な図面は、審査の重要な判断材料となります。以下のポイントを押さえて作成しましょう。
土地利用計画図の作成ポイント
1. 見やすさを重視する
- 農業委員は高齢の方が多いため、文字は大きく、図面は見やすく作成
- A3サイズの用紙に縮尺1/100~1/300程度で作成6
2. 利用目的を明確に示す
- 空きスペースがある場合は、その必要性を明示
- 例:「維持管理スペース」「車両転回スペース」など
- 必要のない部分は転用が認められないため、全てのスペースの用途を明確に6
3. 公図を活用する
- 公図をスキャンしてその上から作図すると、隣接地との関係が明確になる
- 進入路や接道状況を明示6
4. 周辺農地への被害防止策を記載する
5. 必要な情報を漏れなく記載する
具体的な図面作成例
(1) 位置図の例
[市街地図に申請地を赤で囲み、最寄りの駅、役場、主要道路との位置関係を示す]
縮尺:1/10,000
(2) 土地利用計画図の例(住宅建築の場合)
[公図をベースに以下の要素を記載]
- 申請地の境界線(赤線で囲む)
- 建物の配置(寸法付き)
- カーポート、庭、家庭菜園などの配置
- 隣接地の地番、地目、所有者名
- 道路、水路の位置
- 排水の流れ(矢印で表示)
- 雨水処理方法の注記
- 隣接農地との境界処理(フェンス、見切り壁など)
(3) 排水計画図の例
[土地利用計画図に以下の要素を追加]
- 雨水の流れ(青矢印)
- 生活排水の流れ(赤矢印)
- 排水桝の位置
- 接続先の下水道または排水路
- 「雨水は勾配をつけて用水路に流す」などの注記
4.4 よくある記入ミスと対策
農地転用申請でよく見られる記入ミスとその対策を紹介します。これらのポイントに注意することで、スムーズな許可取得につながります。
1. 申請書の記入ミス
よくあるミス
- 住所や氏名が登記簿や住民票と一致していない
- 土地の地番や面積が登記簿と異なる
- 転用目的が具体的でない(「将来の利用のため」など)
- 資金計画と資金証明書の金額が一致していない8
対策
- 登記事項証明書を見ながら正確に転記する
- 住所変更がある場合は住民票も添付する
- 転用目的は具体的に記載する(「一般個人住宅建築のため」など)
- 資金計画書作成前に資金証明書を取得し、金額を合わせる
2. 添付書類の不備
よくあるミス
- 必要書類の添付漏れ
- 登記事項証明書が3ヶ月を超えて古い
- 現況写真が不足している(全景や四方からの撮影がない)
- 資金証明が不足している(計画金額を下回っている)8
対策
- チェックリストを活用して書類を確認する
- 申請直前に登記事項証明書を取得する
- 現況写真は多めに撮影し、撮影方向を図示する
- 資金証明は計画金額を上回る金額で取得する
3. 図面作成の不備
よくあるミス
- 排水計画が不明確または不適切
- 隣接農地との境界処理が示されていない
- 空きスペースの用途が説明されていない
- 建築面積や転用面積の計算が不正確12
対策
- 排水先と排水経路を明確に図示する
- 隣接農地との境界に見切り壁やフェンスを設置し図面に記載する
- すべてのスペースの用途を明示する
- 面積計算は正確に行い、計算式も記載する
4. 事業計画書の不備
よくあるミス
対策
- 転用理由は具体的に、個人的な事情も含めて詳細に記載する
- 土地選定理由は他の候補地との比較も含めて説明する
- 周辺農地への影響と対策を具体的に記載する
- 第1種・第2種農地の場合は、代替地の検討状況を詳細に記載する
農地転用許可申請は複雑ですが、これらのポイントを押さえて丁寧に書類を作成することで、スムーズな許可取得につながります。不明点がある場合は、早めに農業委員会に相談することをお勧めします。
5章 農地転用の許可基準と審査のポイント
農地転用の許可を得るためには、「立地基準」と「一般基準」という2つの重要な審査基準をクリアする必要があります。これらの基準を理解し、適切に対応することが農地転用成功の鍵となります。
5.1 立地基準と一般基準の詳細解説
立地基準
立地基準は、農地の区分ごとに定められた許可基準で、転用しようとする農地の営農条件や市街化の状況から転用の可否を判断するものです。農地は以下の5つに区分され、それぞれ許可の難易度が異なります。
1. 農用地区域内農地(青地)
- 定義: 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域に指定された農地
- 許可方針: 原則不許可(農振除外が必要)
- 例外: 一時的な利用に限り例外的に許可される場合あり
2. 甲種農地
- 定義: 市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えている農地
- 10ヘクタール以上の集団農地で高性能農業機械による営農に適している
- 農業公共投資(土地改良事業等)から8年以内である
- 許可方針: 原則不許可
- 例外: 農業用施設、土地収用対象事業、集落接続の住宅(500㎡以内)など
3. 第1種農地
- 定義: 良好な営農条件を備えている農地
- 10ヘクタール以上の集団農地
- 農業公共投資の対象となった農地
- 生産力の高い農地
- 許可方針: 原則不許可
- 例外: 甲種農地とほぼ同様だが、やや許可が得やすい
4. 第2種農地
- 定義: 市街化が見込まれる区域内の農地や小集団の生産力の低い農地
- 市街化の傾向が著しい区域に近接する区域内の農地(10ヘクタール未満)
- 駅や公共施設から500メートル以内にある農地
- 許可方針: 第3種農地等に立地困難な場合に許可
- 代替性: 当該農地でしか目的が達成できない場合に許可
5. 第3種農地
- 定義: 市街地の区域内または市街化の傾向が著しい区域内の農地
- 上下水道・ガス管のうち2つ以上が埋設された道路の沿道区域
- 駅や公共施設から300メートル以内にある農地
- 用途地域が定められている区域内の農地
- 許可方針: 原則許可
一般基準
一般基準は、農地区分に関わらず適用される基準で、転用事業の確実性や周辺農地への影響などを審査します。以下の要件を満たさない場合は不許可となります。
1. 転用事業が確実に行われること
- 資金力・信用があること
- 転用行為の妨げとなる権利を持つ者の同意を得ていること
- 許可後、遅滞なく事業を行う見込みがあること
- 必要な行政庁の認可・許可等が得られる見込みがあること
2. 周辺農地の営農条件に支障を生じさせないこと
- 土砂流出等の災害を発生させるおそれがないこと
- 農業用用排水施設の機能に支障を及ぼさないこと
- 集団的に存在する農地を分断しないこと
- 日照・通風等に悪影響を及ぼさないこと
3. 一時転用の場合、農地への復元が確実であること
- 事業終了後、農地に復元される見込みがあること
- 一時転用の場合、土地の所有権取得を目的としないこと
5.2 審査で重視されるポイントと対策
農地転用の審査では、以下のポイントが特に重視されます。それぞれに対する効果的な対策を解説します。
1. 事業計画の具体性と実現可能性
重視ポイント:
- 事業内容の明確さ
- 事業スケジュールの現実性
- 事業規模と転用面積の適切な関係
対策:
- 事業計画書は具体的かつ詳細に作成する
- 実施スケジュールを明確に示し、着工・完了予定日を現実的に設定する
- 転用面積は必要最小限にとどめ、余剰スペースがある場合はその必要性を説明する
- 建物の配置図や土地利用計画図を精密に作成する
2. 資金計画の確実性
重視ポイント:
- 資金調達方法の明確さ
- 資金証明と計画金額の整合性
- 事業者の信用力
対策:
- 預金残高証明書や融資証明書など、資金力を証明する書類を必ず添付する
- 資金計画書の金額と資金証明の金額を一致させる(証明額は計画額より多いことが望ましい)
- 法人の場合は決算書や事業実績を添付し信用力をアピールする
- 土地取得費、造成費、建築費など、費用内訳を明確に示す
3. 周辺農地への影響対策
重視ポイント:
- 排水計画の適切さ
- 土砂流出防止策
- 日照・通風への配慮
- 農業用施設への影響
対策:
- 排水計画図を詳細に作成し、雨水・生活排水の処理方法を明確に示す
- 擁壁や排水溝など、土砂流出防止策を計画に盛り込む
- 建物の高さや配置を工夫し、日照・通風への影響を最小限に抑える
- 農業用水路や農道への影響がない配置計画を立てる
- 必要に応じて土地改良区の意見書を取得する
4. 地域との調和
重視ポイント:
- 周辺の土地利用状況との整合性
- 地域住民や隣接農地所有者の理解
- 地域の農業振興計画との整合性
対策:
- 周辺の土地利用状況を調査し、計画がその状況と調和することを示す
- 隣接農地所有者から同意書を取得する
- 地域住民への説明会を開催し、理解を得る
- 地域の農業振興計画を確認し、計画との整合性を説明する
5.3 不許可となりやすいケースと回避策
農地転用申請が不許可となりやすい主なケースと、その回避策を解説します。
1. 立地基準に適合しない場合
不許可ケース:
- 農用地区域内農地(青地)での転用申請
- 甲種農地・第1種農地での例外規定に該当しない転用
回避策:
- 事前に農業委員会で農地区分を確認する
- 農用地区域内農地の場合は、先に農振除外の手続きを行う
- 甲種農地・第1種農地の場合は、例外規定に該当するよう計画を調整する
- 代替地の検討結果を詳細に記録し、当該地でなければならない理由を明確にする
- 可能であれば、第2種農地や第3種農地への計画変更を検討する
2. 事業計画の不備や不確実性
不許可ケース:
- 資金計画が不明確または資金証明が不足
- 事業スケジュールが非現実的
- 転用面積が事業規模に対して過大
回避策:
- 資金証明は計画金額を上回る額で取得する
- 現実的な事業スケジュールを設定し、遅延リスクも考慮する
- 転用面積は必要最小限にとどめ、各スペースの用途を明確にする
- 過去に同様の事業実績がある場合は、それを示す資料を添付する
3. 周辺農地への悪影響が懸念される場合
不許可ケース:
- 排水計画が不十分で周辺農地への悪影響が懸念される
- 日照・通風を著しく阻害する建物配置
- 農業用施設の機能を阻害する計画
回避策:
- 専門家と相談して適切な排水計画を立案する
- 必要に応じて排水計算書を作成し、周辺への影響がないことを証明する
- 建物の高さや配置を工夫し、日照・通風への影響を最小限に抑える
- 農業用施設との十分な距離を確保する
- 隣接農地所有者から同意書を取得する
4. 法令違反や申請手続きの不備
不許可ケース:
- 無許可で既に転用している
- 過去に農地法違反の履歴がある
- 申請書類の記載内容に虚偽や矛盾がある
回避策:
- 申請前に無断転用していないか確認し、している場合は原状回復する
- 申請書類は正確かつ誠実に記載する
- 関連法令(都市計画法、建築基準法など)の許認可状況も確認する
- 不明点は事前に農業委員会に相談する
5.4 条件付き許可への対応方法
農地転用申請が条件付きで許可される場合があります。これは完全な許可ではありませんが、条件を満たせば転用が認められるものです。
条件付き許可の主な種類
1. 工事施工条件
- 排水施設の設置や改良
- 擁壁や防護柵の設置
- 特定の工法や材料の使用
2. 期限付き条件
- 一定期間内の工事着手・完了
- 定期的な進捗報告の義務付け
3. 利用条件
- 特定用途以外への使用禁止
- 将来的な用途変更の制限
4. 報告義務
- 工事完了報告の提出
- 定期的な利用状況報告
条件付き許可への効果的な対応
1. 条件の正確な理解
- 許可書に記載された条件を詳細に確認する
- 不明点は農業委員会に確認し、誤解のないようにする
- 必要に応じて条件の修正や緩和を相談する
2. 条件履行のための計画立案
- 条件を満たすための具体的な実施計画を立てる
- 必要な追加費用や時間を見積もり、事業計画に組み込む
- 専門家(建設業者、設計士など)と相談し、最適な履行方法を検討する
3. 履行状況の記録と報告
- 条件履行の過程を写真や文書で記録する
- 定期的な報告が求められる場合は、期限を厳守する
- 工事完了報告書は詳細かつ正確に作成する
4. 条件変更が必要な場合の対応
- 条件履行が困難になった場合は、早めに農業委員会に相談する
- 変更が必要な理由と代替案を具体的に提示する
- 変更申請が必要な場合は、必要書類を速やかに準備する
農地転用の許可基準は複雑ですが、立地基準と一般基準の両方を理解し、審査で重視されるポイントに対応することで、許可取得の可能性を高めることができます。特に不許可となりやすいケースを事前に把握し、適切な回避策を講じることが重要です。また、条件付き許可の場合は、条件を正確に理解し、確実に履行することで、スムーズな農地転用を実現しましょう。
>>農地転用のご相談、手続きのご依頼は、行政書士 小川洋史事務所まで
6章 農地転用の実例と成功事例
農地転用の成功事例を知ることは、自身の申請を進める上で大きな参考になります。ここでは、住宅建設、太陽光発電設備設置、商業施設建設の3つの用途別に実際の成功事例を紹介し、それぞれのケースで許可取得に至ったポイントと工夫を解説します。
6.1 住宅建設のための転用事例
事例1: 先祖代々の農地を活用した分家住宅の建設
Aさん(60代・男性)は、先祖代々受け継いできた畑を有効活用するため、都市近郊という立地を活かし、賃貸アパートの建設を計画しました。
(1) 準備段階
- 不動産会社や行政書士に相談し、計画の実現可能性を確認
- 市場調査で賃貸アパートの需要や競合状況を調査
- 農地転用に必要な手続きや許可条件を確認
- 建設費用や運営費用の見積もりを作成
(2) 農地転用手続き
- 農地転用計画書を作成し、農業委員会に提出
- 約3ヶ月の審査期間を経て、農業委員会から許可を取得
- 地域の農業への影響を最小限に抑える計画を提出したことが、スムーズな許可取得につながった
(3) 地目変更登記
- 農地転用許可後、土地家屋調査士に依頼して地目変更登記を実施
- 法務局に必要書類を提出し、現地調査を受けた
(4) アパート建設と運用
- 宅地となった土地に20戸のアパートを建設
- 若い家族向けの間取りを中心に設計
- 建築基準法など関連法規に適合した設計と施工を実施
- 不動産会社と連携して入居者募集を開始
- 地元の広告やオンラインプラットフォームを活用
- 半年で満室となり、安定した収入を確保
(5) 成功のポイント
- 専門家(行政書士、不動産会社)への早期相談
- 周辺環境と需要を考慮した建物設計
- 農業への影響を最小限に抑える計画立案
- 地域特性を活かした入居者募集戦略
事例2: 市街化調整区域内での自己住宅建設
Bさん(40代・男性)は、市街化調整区域内にある親から相続した農地に自己住宅を建設することを計画しました。
(1) 事前調査と計画
- 農業委員会に相談し、農地区分(第2種農地)を確認
- 市の都市計画課に建築可能性を確認
- 自己用住宅として必要最小限の面積(330㎡)に絞った転用計画を立案
(2) 申請準備
- 周辺農地への影響を最小限にする排水計画を詳細に作成
- 隣接農地所有者から同意書を取得
- 資金計画と融資証明書を準備
(3) 許可取得のポイント
- 申請地が集落に接続していることを強調
- 実家から近い場所であることを理由に、当該地でなければならない理由を明確に説明
- 農業の継続意思を示すため、残りの農地での営農計画も提出
この事例では、市街化調整区域内という厳しい条件にもかかわらず、集落接続要件を満たし、必要最小限の面積に抑えた計画としたことで許可を得ることができました。
6.2 太陽光発電設備設置のための転用事例
事例1: 耕作放棄地を活用したソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)
千葉県匝瑳市では、40年以上前に山を削って畑にした場所が、水はけが悪く痩せていたため、約15年間耕作放棄地となっていました。この土地を活用し、「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」として生まれ変わらせた事例です。
(1) プロジェクト概要
- 設備容量:1MW
- 土地面積:約32,000㎡
- 導入年月:2017年3月
- 導入費用:約3億円
- 年間売電収入:約4,700万円
- パネル下で栽培する作物:有機大豆、有機麦
(2) 成功のための取り組み
- 地元農家が地権者の賛同を得るために奔走し、地域の合意形成を実現
- トラクターも自在に動ける大規模ソーラーシェアリング設備を設計
- 地域の農業生産法人に年間200万円の耕作委託料を支払い、農地としての機能を維持
- 売電収益の一部を地域の協議会に環境保全基金として年間200万円拠出
- 耕作放棄地だった土地を農地として再生させることに成功
この事例は、単なる太陽光発電事業ではなく、耕作放棄地の再生と地域活性化を同時に実現した点が評価されています。
事例2: 神奈川県相模原市のブルーベリー農園でのソーラーシェアリング
神奈川県相模原市の株式会社さがみこファームでは、遊休農地を活用したソーラーシェアリングに取り組んでいます。
(1) プロジェクト内容
- ブルーベリーなどの果樹を育てる農地に約270kWの発電設備を設置
- 一般家庭約80軒分の電力を生産
- 地元自治体と災害時の電源供給協定を締結
- 2022年にはブルーベリー摘みや食べ比べを楽しめる観光農園「さがみこベリーガーデン」をオープン
(2) 成功のポイント
- 食料・エネルギーの自給率向上と6次産業化の両立
- 災害時の地域貢献という付加価値の創出
- 観光農園としての展開による収益源の多様化
この事例は、農地の多目的利用により、エネルギー生産と農業生産、さらには観光業まで組み合わせた持続可能なビジネスモデルを構築している点が特徴です。
事例3: 愛知県での農福連携型ソーラーシェアリング
愛知県名古屋市に本社を置く株式会社エコスマイルでは、「農福連携」とソーラーシェアリングを組み合わせた事業を展開しています。
(1) プロジェクトの特徴
- ソーラーシェアリングでの農作業に障害のある人を雇用
- 就労・自立の機会を提供する社会貢献型事業
- エネルギー自給率と食料自給率の向上に加え、福祉にも貢献
- 地域に根差した持続可能な事業モデルの構築
(2) 成功のポイント
- 社会課題(障害者雇用、再生可能エネルギー、食料生産)の同時解決
- 地域との連携強化による事業の安定化
- 複数の収益源確保による事業リスクの分散
この事例は、農地転用の目的が単なる発電事業ではなく、社会的価値の創出を含む複合的なものである点が評価され、許可取得につながりました。
6.3 商業施設建設のための転用事例
事例1: 新道路開通に伴う商業施設への転用
新しい道路の開通により、周辺地域のアクセスが飛躍的に向上し、商業施設としての開発が可能となった事例として、クスリのアオキ久世築山店の例があります。
(1) 転用の背景
- 新道路の開通により交通の便が向上
- 農地だったエリアの商業ポテンシャルが向上
- 地域に新たな商業ニーズが生まれた
(2) 成功のポイント
- インフラ整備による土地価値の向上を適切に評価
- 地域住民の利便性向上につながる施設計画
- 周辺環境との調和を考慮した設計
この事例では、インフラ整備による影響を的確に捉え、地域に必要な商業施設を提供することで、農地転用の公益性を示すことができました。
事例2: 遊休農地を活用した自動車販売店の拡張
遊休農地の活用事例として、南海スズキ富田林営業所の拡張計画があります。
(1) プロジェクト概要
- 既存の自動車販売店に隣接する遊休農地を活用
- 営業所の拡張スペースとして農地を転用
- 土地所有者と交渉の上、計画を実現
(2) 成功のポイント
- 既存施設に隣接する土地であることを強調
- 遊休農地の有効活用という観点からの計画立案
- 地域経済への貢献(雇用創出、税収増加)を明示
この事例では、既存施設の拡張という明確な必要性と、遊休農地の有効活用という公益性の両面から農地転用の許可を得ることができました。
事例3: 農地区画整理事業による商業施設群の誕生
兵庫県三田市では、農地区画整理事業が進行し、その結果として「ドコモショップ新三田店、コメダ珈琲店 新三田駅前店」、「スターバックスコーヒー 新三田桜のこみち公園店」が誕生しました。
(1) プロジェクトの流れ
- 市主導の区画整理事業として計画
- 農地を含む広範囲の土地を再整備
- 商業施設用地として一部を転用
- 有名チェーン店の誘致による地域活性化
(2) 成功のポイント
- 自治体主導の計画的な土地利用転換
- 区画整理事業という法的枠組みの活用
- 地域全体の価値向上を目指した総合的な計画
この事例は、個別の農地転用ではなく、地域全体の土地利用を見直す区画整理事業の一環として実施されたことで、より広い視点からの土地活用が可能になりました。
6.4 各事例における成功のポイントと工夫
これらの事例から見えてくる農地転用成功のための共通ポイントと工夫を整理します。
1. 地域との関係構築
(1) 地域住民との合意形成
- 千葉県匝瑳市のソーラーシェアリング事例では、地元農家が地権者の賛同を得るために奔走
- 地域説明会の開催や個別訪問による丁寧な説明
- 地域の課題解決につながる計画であることを強調
(2) 地域経済への貢献
- 雇用創出や税収増加など、地域経済に貢献する計画であることを明示
- 売電収益の一部を地域に還元する仕組みの構築
- 地元企業や人材の活用計画の提示
2. 専門家の活用と事前準備
(1) 専門家への早期相談
- 行政書士や土地家屋調査士など、専門家への早期相談による計画の精緻化
- 農業委員会との事前協議による課題の洗い出し
- 市場調査や需要予測による事業計画の裏付け
(2) 周到な事前準備
- 詳細な排水計画や環境影響評価の実施
- 隣接農地所有者からの同意書取得
- 資金計画と融資証明書の準備
3. 計画の工夫と差別化
(1) 必要最小限の転用面積
- 自己用住宅の事例では、必要最小限の面積(330㎡)に絞った計画
- 残りの農地での営農継続計画の提示
- 段階的な転用計画による農地への影響軽減
(2) 複合的な価値創出
- 単なる転用ではなく、複合的な価値を創出する計画
- 農福連携型ソーラーシェアリングによる社会課題の同時解決
- 6次産業化や観光農園など、新たな価値創造
4. 法制度の活用
(1) 特例制度の活用
- 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)による一時転用の活用
- 区画整理事業という法的枠組みの活用
- 地域未来投資促進法などの特例制度の活用
(2) 立地条件の活用
- 集落接続要件の活用(市街化調整区域内での住宅建設)
- 新道路開通による交通利便性向上の活用
- 既存施設に隣接する土地であることの強調
5. 複合的な価値創出
(1) 多目的利用の推進
- 単一目的ではなく、複数の用途を組み合わせた計画立案
- 農業と商業、観光などの異なる産業の融合
- 季節変動に対応できる多角的な事業展開
(2) 地域資源の活用
- 地域の特産品や文化的資源を活かした計画
- 地元の人材や技術の活用
- 地域ブランドの構築と発信
6. 持続可能性への配慮
(1) 環境負荷の低減
- 太陽光発電事例では、農地としての機能を維持しながらエネルギー生産
- 雨水利用や自然エネルギーの活用
- 生物多様性に配慮した土地利用計画
(2) 長期的な事業計画
- 一時的な利益ではなく、長期的な収益性を重視
- 市場変化に対応できる柔軟な事業モデル
- 次世代への継承を見据えた計画立案
7. 行政との連携強化
(1) 早期からの協議
- 計画初期段階からの行政との密な協議
- 地域の土地利用計画との整合性確保
- 行政の支援制度や補助金の活用
(2) 透明性の確保
- 情報公開と住民説明会の積極的な実施
- 環境影響評価の自主的な実施
- 地域貢献策の明確な提示
農地転用の成功事例からは、単に法的手続きをクリアするだけでなく、地域との共生や持続可能性、複合的な価値創出など、多角的な視点からの計画立案が重要であることがわかります。これらのポイントを参考に、自身の農地転用計画を検討することで、許可取得の可能性を高めるとともに、より価値の高い土地活用を実現できるでしょう。
7章 農地転用後の手続きと注意点
農地転用の許可を取得したら、それで全ての手続きが終わりというわけではありません。転用後にも適切な手続きを行わなければ、法的なリスクや追加費用が発生する可能性があります。ここでは、農地転用後に必要な手続きと注意点について詳しく解説します。
7.1 工事着手届と完了届の提出
農地転用許可を取得した後は、工事の進捗状況を定期的に報告する義務があります。これは農地法事務処理要領に基づく措置で、転用事業の適切な実施を確保するためのものです。
(1) 工事進捗状況報告書の提出タイミング
- 許可の日から3ヶ月後
- その後1年ごと(工事が完了するまで)
(2) 工事完了報告書の提出タイミング
- 工事が完了した時点で遅滞なく提出
これらの報告書の提出を怠ると、農地法違反となる可能性があります。高島市の規定によれば、「転用事業の進捗状況等を記載した書面等を提出しない転用事業者について、許可権者は事情の聴取や現地調査を行うことになります」とされています。
報告書の提出は、農地転用許可の条件として付されているケースがほとんどです。壬生町の規定では「許可に係る工事が完了するまでの間、本件許可の日から3か月後及びその後1年ごとに工事の進捗状況を報告し、許可に係る工事が完了したときは、遅滞なく、その旨を報告すること」が条件として明記されています。
また、新たに農地転用申請を行う際に、過去の転用案件が未完了の場合は「管内工事進捗状況報告書」の添付が必要となるケースもあります。
7.2 転用事実の確認と地目変更登記
農地転用許可を受けて工事が完了した後は、法務局で地目変更登記を行う必要があります。これは非常に重要な手続きで、怠ると法的なペナルティを受ける可能性があります。
(1) 地目変更登記の期限
- 農地転用後1ヶ月以内(不動産登記法第37条第1項)
(2) 地目変更登記を怠った場合のリスク
- 10万円以下の過料に処せられる可能性(不動産登記法第164条)
- 数年後に土地を売買する際に所有権移転ができない場合がある
- 現況が許可目的と異なる場合、改めて農地法による手続きが必要になる場合がある
地目変更登記の申請は法務局で行います。この手続きには土地家屋調査士への依頼が一般的ですが、自分で行うことも可能です。ただし、専門的な知識が必要となるため、不安がある場合は専門家に相談することをお勧めします。
重要なのは、農地転用の許可や届出だけでは登記簿上の地目は変更されないという点です。宇城市の説明によれば「農地転用申請及び許可だけでは、土地登記事項証明書(登記簿謄本)の地目は変更されません。地目を変更するためには、法務局で地目変更の登記をする必要があります」とされています。
7.3 転用後の税金と費用の変化
農地転用後は、固定資産税などの税金が大幅に上昇することを覚悟しておく必要があります。
(1) 税金の変化
- 農地から宅地・雑種地(駐車場等)への転用許可を受けた場合、たとえ現況が農地であっても、翌年度から固定資産税等の税額が上がる
- これは、転用許可を受けた時点で「宅地としての潜在的価値を有している」と見なされ、評価方法が変わるため
金沢市の説明によれば、「田・畑から宅地・雑種地(駐車場等)などへの転用の許可を受けた場合や届出が受理された場合は、たとえ現況が農地であっても実質的には宅地としての潜在的価値を有しており、その時点で農地としての認定ができなくなり、評価方法が変わるため、翌年度から固定資産税等の税額が上がります」とされています。
つまり、転用後すぐに建物を建てなくても、許可を受けた時点で税金は上がるのです。このことを踏まえて、転用後の資金計画を立てる必要があります。
7.4 転用条件違反のリスクと対策
農地転用許可には様々な条件が付されることがあります。これらの条件に違反すると、違反転用として処分の対象となる可能性があります。
(1) 違反転用となるケース
- 許可を受けないで農地を転用する
- 許可を受けないで農地等を転用するために権利の設定・移転を行う
- 転用許可に付した条件に違反する
- 違反転用者からその違反に係る工事等を請け負う
- 虚偽等の不正な手段による許可を受ける
(2) 違反転用への対応
- 農業委員会による期間を定めた是正指導
- 指導に従わない場合、都道府県知事または指定市町村の長による工事停止等の勧告
- 勧告に従わない場合、原状回復命令等の行政処分
- 悪質な場合は刑事訴訟法による告発(最高3年以下の懲役または300万円以下の罰金)
農林水産省の資料によれば、違反転用の約9割は発見した年中に解消されていますが、1割程度は翌年以降も処理が継続しています。
違反転用を防ぐためには、以下の対策が有効です:
- 許可条件を正確に理解し、遵守する
- 工事進捗状況報告書や工事完了報告書を期限内に提出する
- 計画変更が必要な場合は事前に農業委員会に相談する
- 転用後の土地利用が許可内容と一致しているか定期的に確認する
- 地目変更登記を期限内に行う
農地転用後の手続きは、転用そのものと同じくらい重要です。適切に手続きを行い、条件を遵守することで、将来的なトラブルや追加費用を避けることができます。不明点がある場合は、早めに農業委員会や専門家に相談することをお勧めします。
農地転用は許可を得て工事が完了しても、その後の手続きや条件遵守が重要です。工事進捗状況報告書と工事完了報告書の提出、地目変更登記の実施、税金の変化への対応、そして転用条件の遵守を徹底することで、スムーズな農地転用の完了と安定した土地利用が実現できるでしょう。
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8章 農地転用で困ったときの対処法
農地転用の手続きは複雑で、様々な問題に直面することがあります。ここでは、よくある困りごとへの対処法を具体的に解説します。
8.1 近隣住民との調整方法
農地転用において、近隣住民との良好な関係構築は許可取得後のトラブル防止にも重要です。
事前説明会の開催
転用計画が具体化した段階で、近隣住民への説明会を開催しましょう。この際のポイントは:
- 転用目的と計画内容を分かりやすく説明する
- 工事スケジュールを明確に伝える
- 騒音や排水など想定される影響とその対策を説明する
- 質問や懸念に誠実に回答する
個別訪問による丁寧な説明
説明会に参加できなかった住民や、特に影響が大きい隣接地の所有者には、個別に訪問して説明することが効果的です。
意見・要望への対応
住民から出された意見や要望については:
- 可能な限り計画に反映する姿勢を示す
- 対応できない事項については、その理由を丁寧に説明する
- 合意事項は書面にまとめ、双方で保管する
8.2 行政との協議のコツ
農業委員会や自治体との協議を円滑に進めるためのコツを紹介します。
事前相談の活用
正式な申請前に、農業委員会への事前相談を活用しましょう。この段階で:
- 転用計画の概要を説明し、問題点の洗い出しを依頼する
- 必要書類や手続きの流れを確認する
- 地域特有の慣習や暗黙のルールを把握する
担当者との良好な関係構築
- 質問や相談は簡潔にまとめ、担当者の時間を尊重する
- 指摘された事項には迅速に対応する
- 専門用語を理解していない場合は、素直に質問する
情報の正確な提供
- 事実と異なる情報は絶対に提供しない
- 不明点は「調べて報告します」と伝え、後日正確な情報を提供する
- 計画変更が生じた場合は速やかに報告する
不許可となった場合の再申請戦略
農地転用申請が不許可となった場合でも、適切な対応で再申請の可能性があります。
不許可理由の正確な把握
- 農業委員会から不許可理由を詳細に説明してもらう
- 書面で不許可理由を受け取り、内容を精査する
- 不明点があれば遠慮なく質問し、明確にする
計画の見直しと修正
不許可理由に応じて計画を修正します:
- 立地基準に関する不許可の場合:
- 転用面積の縮小を検討
- 代替地の検討結果を詳細に記録
- 例外規定に該当するよう計画を調整
- 一般基準に関する不許可の場合:
- 排水計画や被害防除策を強化
- 資金計画の裏付けを強化
- 事業計画の具体性を高める
再申請のタイミング
- 不許可理由を完全に解消してから再申請する
- 農業委員会の担当者と再申請のタイミングを相談する
- 農業委員会の総会スケジュールを考慮して申請する
8.3 専門家に相談すべきタイミングと選び方
農地転用では、専門家のサポートが成功の鍵となることが多いです。
専門家に相談すべきタイミング
以下のような状況では、専門家への相談を検討しましょう:
- 農地区分が第1種農地や甲種農地など、許可が厳しい場合
- 転用面積が大きい(30a以上)場合
- 周辺住民との調整が難しい場合
- 一度不許可となり、再申請を検討している場合
- 複数の法令(都市計画法、建築基準法など)に関わる場合
適切な専門家の選び方
農地転用に強い行政書士を選ぶことが重要です。選定のポイントは:
- 農地転用の実績が豊富であること
- 地元の土地事情に詳しいこと
- 農地法だけでなく関連法令にも精通していること
- 農業委員会との良好な関係を持っていること
経験豊富な行政書士は、許可取得に必要な書類作成や農業委員会とのやり取りを効率的に行うことができます。また、地域特有の課題や法令に精通しているため、許可取得までのプロセスがスムーズに進みます。
専門家への依頼方法
- 初回相談では、転用計画の概要と課題を明確に伝える
- 費用体系や支払い方法を事前に確認する
- 依頼する業務範囲を明確にする(書類作成のみか、申請代行まで含むかなど)
- 契約書を交わし、トラブル防止に努める
農地転用の手続きは複雑ですが、適切な対処法を知り、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、多くの困難を乗り越えることができます。特に不許可となった場合でも、原因を正確に把握し、適切に対応することで、再申請の可能性を高めることができるでしょう。
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9章 まとめ:成功する農地転用申請のための5つのポイント
農地転用の許可申請は複雑なプロセスですが、これまでの章で解説してきた内容を踏まえ、成功への道筋が見えてきたのではないでしょうか。ここでは、農地転用を成功させるための5つの重要ポイントを総括します。
9.1 事前準備の重要性
農地転用の成否を大きく左右するのが、申請前の入念な準備です。
(1) 農地区分の事前確認
申請前に必ず農業委員会で対象農地の区分を確認しましょう。農地区分によって許可の難易度や必要な対応が大きく異なります。
- 第3種農地:原則許可
- 第2種農地:代替性がない場合に許可
- 第1種・甲種農地:原則不許可(例外規定あり)
- 農用地区域内農地:原則不許可(農振除外が必要)
農地区分を知ることで、申請の見通しが立ち、必要な準備や計画の修正ができます。
(2) 周辺環境の調査
対象農地の周辺環境を詳細に調査することも重要です。
- 接道状況や水路の位置
- 隣接農地の所有者や耕作状況
- 土地改良区域内かどうか
- 周辺の土地利用状況
これらの情報は、転用計画の立案や周辺農地への影響対策を検討する上で不可欠です。
(3) 関連法令の確認
農地法以外にも、以下の法令に該当しないか確認が必要です。
- 都市計画法(開発許可)
- 建築基準法(接道義務など)
- 土地改良法(土地改良区の同意)
- 各自治体の条例
これらの確認を怠ると、農地転用許可が下りても他の法令で工事ができないという事態になりかねません。
9.2 申請書類の正確な作成
農地転用申請では、書類の正確さが許可の可否を左右します。
(1) 書類作成の基本原則
- 登記事項証明書と完全に一致する情報を記載
- 明確で具体的な表現を使用
- 数値は正確に記載
- 添付書類の漏れがないよう確認
特に、土地の所在地や地番、面積などの基本情報は、登記簿と完全に一致させることが重要です。
(2) 図面作成のポイント
- 縮尺を明記し、方位を示す
- 隣接地の地番や地目を記載
- 建物や施設の配置を正確に示す
- 排水経路や被害防除施設を明示
- 空きスペースの用途を明確に説明
図面は審査の重要な判断材料となるため、見やすく正確な作成を心がけましょう。
(3) 事業計画書の充実
事業計画書には以下の内容を具体的に記載します。
- 転用目的と選定理由
- 事業内容と実施スケジュール
- 資金計画と資金調達方法
- 周辺農地への影響と対策
特に、第1種・第2種農地の場合は、当該農地でなければならない理由や代替地の検討状況を詳細に記載することが重要です。
9.3 行政との適切なコミュニケーション
農業委員会や自治体との良好な関係構築は、スムーズな許可取得の鍵となります。
(1) 事前相談の活用
正式な申請前に、農業委員会への事前相談を積極的に活用しましょう。
- 計画の概要を説明し、問題点の洗い出しを依頼
- 必要書類や手続きの流れを確認
- 地域特有の慣習や暗黙のルールを把握
事前相談で指摘された事項に対応することで、本申請での不備を防ぐことができます。
(2) 担当者とのコミュニケーション
担当者との良好な関係構築のポイントは:
- 質問や相談は簡潔にまとめ、担当者の時間を尊重
- 指摘された事項には迅速に対応
- 不明点は素直に質問
- 計画変更が生じた場合は速やかに報告
担当者は農地転用の専門家であり、その助言は許可取得の大きな助けとなります。
(3) 農業委員会総会への対応
多くの自治体では、農業委員会の総会で農地転用申請が審議されます。
- 総会の日程を確認し、申請の締切日を守る
- 必要に応じて総会に出席し、計画を説明する準備をする
- 質問には誠実かつ明確に回答する
総会での印象も審査結果に影響するため、丁寧な対応を心がけましょう。
9.4 計画の実現可能性と具体性
農地転用計画の実現可能性と具体性は、審査の重要なポイントです。
(1) 資金計画の裏付け
- 預金残高証明書や融資証明書など、資金力を証明する書類を準備
- 資金計画書の金額と資金証明の金額を一致させる
- 土地取得費、造成費、建築費など、費用内訳を明確に示す
資金不足で計画が頓挫することを防ぐため、余裕を持った資金計画を立てましょう。
(2) 実施スケジュールの現実性
- 許可取得から工事着手までの期間を現実的に設定
- 季節や天候の影響を考慮したスケジュール立案
- 関連法令の許認可取得期間も考慮
非現実的なスケジュールは、計画全体の信頼性を損なう可能性があります。
(3) 転用目的と規模の整合性
- 転用目的に対して適切な規模の計画とする
- 過大な面積の転用は避け、必要最小限にとどめる
- 各スペースの用途を明確に説明
転用面積が過大と判断されると、不許可や面積縮小の条件が付される可能性があります。
9.5 専門家のサポート活用
農地転用の複雑な手続きを成功させるためには、専門家のサポートが大きな助けとなります。
(1) 専門家に依頼するメリット
- 農地法や関連法令の専門知識による的確なアドバイス
- 地域の土地事情や農業委員会の傾向に関する情報
- 申請書類の正確な作成と不備の防止
- 農業委員会との円滑なコミュニケーション
特に、第1種・甲種農地の転用や大規模な転用計画では、専門家のサポートが成功の鍵となることが多いです。
(2) 適切な専門家の選び方
農地転用に強い行政書士を選ぶことが重要です。選定のポイントは:
- 農地転用の実績が豊富であること
- 地元の土地事情に詳しいこと
- 農地法だけでなく関連法令にも精通していること
- 農業委員会との良好な関係を持っていること
地域の行政書士会や知人の紹介、インターネットでの評判などを参考に選びましょう。
(3) 専門家との効果的な協働
専門家に依頼する際は、以下の点に注意しましょう:
- 計画の意図や背景を詳細に伝える
- 質問には迅速かつ正確に回答する
- 必要な資料を速やかに提供する
- アドバイスを真摯に受け止め、必要に応じて計画を修正する
専門家と依頼者の良好なコミュニケーションが、スムーズな許可取得につながります。
9.6 最後に
農地転用は一見複雑な手続きですが、本記事で解説した5つのポイントを押さえることで、成功への道筋が見えてきます。
- 事前準備を入念に行い、農地区分や関連法令を確認する
- 申請書類を正確に作成し、具体的な計画を示す
- 行政との適切なコミュニケーションを心がける
- 計画の実現可能性と具体性を高める
- 必要に応じて専門家のサポートを活用する
これらのポイントを踏まえ、計画的に農地転用を進めることで、スムーズな許可取得と、その後の円滑な事業実施が可能になるでしょう。農地転用は単なる手続きではなく、地域の土地利用や農業の在り方にも関わる重要な取り組みです。適切なプロセスを経て、地域と調和した有意義な土地活用を実現してください。
10章 FAQ:農地転用に関するよくある質問
農地転用に関して多くの方が抱える疑問にお答えします。許可申請の期間や費用、申請方法から不許可になる理由まで、実務に即した情報を詳しく解説します。
Q1. 許可までの期間はどのくらいか
農地転用の許可までの期間は、農地の区分や申請内容によって大きく異なります。
(1) 市街化区域内の農地(届出のみ)
(2) 市街化区域外の一般農地(許可申請)
(3) 農用地区域内農地(青地)
注意点として、多くの自治体では月に1回の締切日を設けており、その締切日に間に合わないと1ヶ月程度の遅延が発生します2。また、土地改良区の意見書や太陽光条例に基づく許可書など、関係法令の手続きが必要な場合は、さらに期間が延びることがあります2。
Q2. 費用はどのくらいかかるのか
農地転用にかかる費用は、申請方法や農地の状況によって異なります。
(1) 自分で申請する場合の書類取得費用
- 登記事項証明書:1通480円~600円4
- 公図:1通365円~450円4
- 土地改良区の意見書:数千円4
- 土地改良区域除外決済金:100~500円/㎡4
- 残高証明発行手数料:700~900円4
- 融資証明書発行手数料:数千円~1万円4
(2) 専門家に依頼する場合の費用
なお、農地転用許可申請では、開発許可申請や確定測量、分筆費用などが別途必要になる場合があり、これらを含めると数百万円単位になることもあります4。
Q3. 自分で申請することは可能か
農地転用の申請を自分で行うことは可能ですが、申請の種類や複雑さによって難易度が大きく異なります。
(1) 農地転用届出(市街化区域内)
(2) 農地転用許可申請(市街化区域外)
- 一般個人では難しい高度な申請技術を要する4
- 設計士や土地家屋調査士でないと作成できない書類が必要4
- 申請書類が複雑で多岐にわたる(20種類以上の書類が必要な場合も)
- 農地区分の判断や許可基準の理解が必要
自分で申請する場合は、事前に農業委員会に相談し、必要書類や手続きについて詳しく確認することをお勧めします。また、書類の不備や記入ミスがあると審査が遅れる原因となるため、慎重に準備する必要があります。
Q4. 不許可になる主な理由は何か
農地転用が不許可になる主な理由は以下の通りです:
- 農用地区域内農地(青地):原則として転用不可
- 第1種農地:良好な営農条件を備えた農地で原則不許可
- 甲種農地:特に良好な営農条件を備えた農地で原則不許可
- 事業計画の不備や実現可能性の低さ
- 資金力の不足(融資証明や残高証明が不十分)
- 周辺農地への悪影響(日照、通風、排水など)
- 周辺住民への配慮不足
- 無許可ですでに転用している
- 過去に農地法違反の履歴がある
- 申請内容に虚偽がある
- 工事完了報告義務を果たしていない
- 必要書類の不足や記載内容の誤り
- 境界くいが確認できない
- 添付図面の不備
不許可となった場合でも、原因を正確に把握し、計画を見直して再申請することで許可を得られる可能性があります。また、不服申し立て(審査請求や訴訟)の道もあります12。
Q5. 行政書士に依頼するメリットは何か
農地転用申請を行政書士に依頼するメリットは以下の通りです:
1. 専門知識による適切な申請
- 農地法や関連法令に精通しているため、申請書類を正確に作成できる
- 農地区分や許可基準を熟知しており、許可を得やすい申請内容を提案できる
- 地域特有の慣習や暗黙のルールを把握している
2. 時間と労力の節約4
- 複雑な書類作成や資料収集の手間が省ける
- 農業委員会とのやり取りを代行してくれる
- 修正や訂正の手間を最小限に抑えられる
3. 許可取得率の向上
- 過去の実績や経験から、許可を得やすい申請方法を知っている
- 農業委員会との良好な関係を持っていることが多い
- 不許可となりそうな点を事前に発見し、対策を講じられる
4. トータルコストの削減
- 書類の不備による再申請や遅延を防げる
- 関連する他の手続き(開発許可など)も含めた総合的なアドバイスが受けられる
- 不要な書類作成や手続きを省略できる
農地転用許可申請は複雑で専門的な知識が必要なため、特に市街化区域外の農地転用や大規模な転用計画の場合は、行政書士への依頼を検討することをお勧めします。
Q6. 農地転用の種類と必要な手続きは何か
農地転用の種類と必要な手続きは以下の通りです:
1. 農地転用届出(市街化区域内の農地)
- 許可ではなく届出のみで転用可能
- 農業委員会への届出後、約1週間で受理通知書が発行される
- 受理通知書を受け取れば転用工事が可能
2. 農地転用許可申請(市街化区域外の農地)
- 都道府県知事または指定市町村長の許可が必要
- 農業委員会を通じて申請し、総会での審議を経て許可される
- 農地の面積によって手続きの流れが異なる(30a以下、30a以上4ha以下、4ha超)
3. 一時転用(期間を定めた一時的な利用)
- 工事用仮設事務所、資材置場、イベント用駐車場などの一時的利用
- 原則として3年以内(営農型太陽光発電設備は最長10年)
- 農地への復元計画書などの追加書類が必要
4. 農振除外手続き(農用地区域内農地の場合)
- 農振除外の申請・許可を先に受ける必要がある
- 年に数回しか申請受付がない場合が多い
- 除外許可後に農地転用申請を行う
Q7. 転用後の手続きは何が必要か
農地転用許可後に必要な手続きは以下の通りです:
1. 工事進捗状況報告書の提出
- 許可の日から3ヶ月後
- その後1年ごと(工事が完了するまで)
2. 工事完了報告書の提出
- 工事が完了した時点で遅滞なく提出
3. 地目変更登記
- 農地転用後1ヶ月以内に法務局で手続き
- 土地家屋調査士に依頼するのが一般的
- 登記簿上の地目を変更しないと、10万円以下の過料に処せられる可能性がある
4. 固定資産税の変更
- 転用許可を受けた時点で、翌年度から固定資産税等の税額が上がる
- 現況が農地のままでも、宅地等としての評価に変わる
Q8. 転用できない農地でも活用する方法はあるか
転用が難しい農地(第1種農地、甲種農地、農用地区域内農地)でも、以下の方法で活用することが可能です:
1. 例外規定の活用
- 農業用施設(農産物直売所、農家レストランなど)
- 農家住宅や分家住宅(集落接続要件を満たす場合)
- 土地収用法対象事業(公共事業)
- 地域の農業振興に関する計画に基づく施設
2. 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)
- 農地としての利用を継続しながら、上部空間に太陽光パネルを設置
- 支柱部分のみ一時転用として申請(最長10年)
- 農業と発電事業の両立が可能
3. 農地として高付加価値化
- 有機農業や特殊作物の栽培
- 観光農園や体験農園としての活用
- 農産物の6次産業化(加工・販売)
4. 農地中間管理機構の活用
- 耕作できない農地を農地中間管理機構に貸し出す
- 機構が担い手農家に転貸し、賃料収入を得られる
Q9. 農地転用の審査ではどのような点が重視されるか
農地転用の審査では、以下の点が特に重視されます:
1. 立地基準との適合性
- 農地区分(甲種、第1種、第2種、第3種)に応じた許可基準を満たしているか
- 第1種・甲種農地の場合、例外規定に該当するか
- 第2種農地の場合、代替地がないことの説明が十分か
2. 事業計画の具体性と実現可能性
- 事業内容が明確で具体的か
- 事業スケジュールは現実的か
- 転用面積は事業規模に対して適切か
3. 資金計画の確実性
- 資金調達方法が明確か
- 資金証明(残高証明書や融資証明書)は十分か
- 事業者の信用力はあるか
4. 周辺農地への影響対策
- 排水計画は適切か
- 土砂流出防止策は講じられているか
- 日照・通風への配慮はあるか
- 農業用施設への影響はないか
5. 地域との調和
- 周辺の土地利用状況との整合性
- 地域住民や隣接農地所有者の理解
- 地域の農業振興計画との整合性
Q10. 農地転用と併せて必要になる可能性のある手続きは何か
農地転用と併せて必要になる可能性のある手続きには以下のようなものがあります:
1. 開発許可(都市計画法)
- 一定規模以上の開発行為に必要
- 市街化調整区域内では特に厳しい審査がある
- 農地転用許可と並行して申請することが多い
2. 建築確認(建築基準法)
- 建物を建築する場合に必要
- 接道義務など、立地条件の確認が重要
- 農地転用許可後に申請するのが一般的
3. 土地改良区の意見書・同意
- 土地改良区域内の農地を転用する場合に必要
- 土地改良区によって手続きや費用が異なる
- 取得に時間がかかる場合がある(1ヶ月程度)
Q11. 不許可になる主な理由は何か
農地転用が不許可になる主な理由は以下の通りです:
1. 立地基準に適合しない場合
- 農用地区域内農地(青地):原則として転用不可
- 第1種農地:良好な営農条件を備えた農地で原則不許可
- 甲種農地:特に良好な営農条件を備えた農地で原則不許可
2. 一般基準に適合しない場合
- 事業計画の不備や実現可能性の低さ
- 資金力の不足(融資証明や残高証明が不十分)
- 周辺農地への悪影響(日照、通風、排水など)
- 周辺住民への配慮不足
3. 申請者の信頼性に問題がある場合
- 無許可ですでに転用している
- 過去に農地法違反の履歴がある
- 申請内容に虚偽がある
- 工事完了報告義務を果たしていない
4. 申請書類の不備
- 必要書類の不足や記載内容の誤り
- 境界くいが確認できない
- 添付図面の不備
Q12. 農地転用後の税金はどう変わるか
農地転用後は、以下のように税金が変化します:
1. 固定資産税の増加
- 農地から宅地・雑種地への転用許可を受けた場合、翌年度から固定資産税等の税額が上がる
- これは、転用許可を受けた時点で「宅地としての潜在的価値を有している」と見なされるため
- 農地の固定資産税評価額は宅地の数分の1であるため、転用後は大幅に税額が上昇する
2. 都市計画税の課税
- 市街化区域内の場合、都市計画税が新たに課税される
- 税率は自治体によって異なるが、一般的に固定資産税評価額の0.2〜0.3%程度
3. 譲渡所得税への影響
- 転用後に売却した場合、譲渡所得税の計算に影響がある
- 農地として長期間保有していた場合の特例が適用できなくなる可能性がある
Q13. 農地転用と併せて必要になる他の許可は何か
農地転用と併せて必要になる可能性のある他の許可には以下があります:
1. 開発許可(都市計画法)
- 一定規模以上の開発行為に必要
- 市街化調整区域内では特に厳しい審査がある
- 農地転用許可と並行して申請することが多い
2. 建築確認(建築基準法)
- 建物を建築する場合に必要
- 接道義務など、立地条件の確認が重要
- 農地転用許可後に申請するのが一般的
3. 土地改良区の意見書・同意
- 土地改良区域内の農地を転用する場合に必要
- 土地改良区によって手続きや費用が異なる
- 取得に時間がかかる場合がある(1ヶ月程度)
Q14. 農地転用の申請から許可までどのくらいかかるか
農地転用の許可までの期間は、農地の区分や申請内容によって異なります:
(1) 市街化区域内の農地(届出のみ)
- 届出から受理まで:約1週間~10日
- 書類準備も含めた全体期間:約2~3週間
(2) 市街化区域外の一般農地(許可申請)
- 30a以下の農地:約5~6週間
- 30a以上4ha以下の農地:約6~7週間
- 4ha超の農地:約7~8週間以上
(3) 農用地区域内農地(青地)
- 農振除外手続きが必要:約6ヶ月~1年以上
- 農振除外後の農地転用申請:さらに約2ヶ月
多くの自治体では月に1回の締切日を設けており、その締切日に間に合わないと1ヶ月程度の遅延が発生することがあります。
Q15. 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは何か
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、農地としての利用を継続しながら、上部空間に太陽光パネルを設置して発電を行う仕組みです。
(1) 特徴
- 農地を維持したまま再生可能エネルギー事業が可能
- 支柱部分のみ一時転用として申請(最長10年)
- 農業と発電事業の収入の両立が可能
- 農作物の生育に必要な日照を確保するため、パネルの設置密度や角度に工夫が必要
(2) 成功事例
- 鹿児島県志布志市のたかとみファームでは、耕作放棄地を活用して営農型太陽光発電を導入し、発電設備の下では牧草の生産が行われています。生産量は近隣の田畑の平均単収とほぼ同じ、100%を維持しています7。
(3) 申請手続き
- 農業委員会に届け出て、農地の一時転用許可を取得する必要があります8
- 審査では、下部の農地での営農計画や収穫量の見込みなどが重視されます
Q16. 農地転用の成功事例にはどのようなものがあるか
農地転用の成功事例としては、以下のようなものがあります:
1. 住宅建設の事例
- 60代男性が先祖代々の畑を活用し、賃貸アパートを建設した事例。市場調査や法的確認、資金計画を入念に行い、20戸のアパートを建設して安定収入を得ています5。
2. 商業施設への転用事例
- 新道路の開通により交通の便が向上し、農地から「クスリのアオキ久世築山店」に転用された事例9。
- 遊休農地を活用した「南海スズキ富田林営業所」の拡張事例9。
- 兵庫県三田市の農地区画整理事業により、「ドコモショップ新三田店」「コメダ珈琲店」「スターバックスコーヒー」などの商業施設が誕生した事例9。
3. 太陽光発電設備の事例
これらの成功事例からは、事前の市場調査や計画立案の重要性、専門家のサポート活用、地域との連携などが成功の鍵となっていることがわかります。
(終わり)